加計学園にしろなんて野暮な指示はしない。昨年11月9日に「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域 に限り」という新条件を追加したことで、事実上、京産大が外され、加計学園だけが選ばれる道ができたのだ。調べるべきはこの”新条件”を誰がどのように決めたかだ。本件の本質はここにある。
— 玉木雄一郎 (@tamakiyuichiro) 2017年6月11日
玉木氏の↑のツイートのように、
「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域 に限り」という新条件(「広域」条件)によって、事実上、京産大が外され、加計学園だけが選ばれる道ができた
と考える人は多い。
だが「これは真っ赤なウソだ」とほぼ断言できる。
なぜか。
日本獣医師会の会長が、実にイイ言葉の数々を残してくれているからだ。
見てみよう。
目次
獣医師会会長は「広域」条件に憤っていた
日本獣医師会会長である藏内勇夫氏は、平成28年(2016年)11月22日にこう言っている↓
しかし、このような大成功の陰で、厳しい事態が進展していました。
それは、かねてから本会及び日本獣医師政治連盟が最重要課題に掲げて取り組んできた国家戦略特区による獣医学部の新設案件です。
11月9日、国家戦略特区諮問会議が開催され、「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う。」ことが決定されました。
そして、早くも18日には、国家戦略特区による内閣総理大臣の認定を受けた獣医学部の設置については、文部科学省告示による大学設置認可基準の適用外とする内閣府のパブリックコメント募集が開始されました。
コメント募集期間は12月17日までの1カ月間とされています。このような国家戦略特区による獣医学部の新設は、文部科学省、獣医系大学等多くの関係者による半世紀にもわたる獣医学教育の国際水準達成に向けた努力と教育改革に全く逆行するものです。
特に↑の太字部分を見ると、「広域」条件に対して会長が納得していない様子が分かる。
さらにこのときのタイトルが「禍根を残す無責任な特区決定に憤りを」となっていることからしても、会長のかなりの不満が読み取れる。
なぜか「せめて1校のみとするよう」会長は奔走した
次に平成29年(2017年)1月30日の会長の発言を見て欲しい↓
残念ながら本年最初の会長短信は、極めて不条理なお知らせから始めなければなりません。
昨年11月の「春夏秋冬(40)」でお伝えしましたが、11月9日、国家戦略特区諮問会議が開催され、「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う。」ことが決定されました。
そして、11月18日から12月17日までの1カ月間、国家戦略特区による内閣総理大臣の認定を受けた獣医学部の設置について、獣医学部の新設・定員増を認めないとする大学設置認可基準の適用外とするための文部科学省告示改正についてのパブリックコメント募集が行われました。
この意見募集に対しては、皆様方から多数の怒りのコメントを提出いただき、総数976件の意見のうち83%が反対意見という結果でした。
この間、私や日本獣医師政治連盟の北村委員長を始めとした本会の役職員は、できれば獣医学部新設決定の撤回、これが不可能な場合でもせめて1校のみとするよう、山本幸三地方創生担当大臣、松野博一文部科学大臣、山本有二農林水産大臣、麻生太郎自民党獣医師問題議員連盟会長、森英介同議員連盟幹事長など多くの国会議員の先生方に、本会の考え方にご理解をいただくよう奔走いたしました。
このような皆様方からの多数の反対意見、大臣及び国会議員の先生方への粘り強い要請活動が実り、関係大臣等のご理解を得て、何とか「1校に限り」と修正された改正告示が、本年1月4日付けで官報に公布・施行されました。
↑の太字の部分をご覧いただきたい。
会長は実に不思議なことを言っているのだ。
会長の発言をまとめるとこうなる↓
11/9に「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う。」ことが決定された。
それに対し会長は憤っている
↓
「広域」条件の決定後、会長は「せめて1校のみとするよう」あらゆる国会議員のもとに奔走した
↓
大臣や国会議員への粘り強い要請活動が実り、何とか「1校に限り」とすることができた
あれ?
11/9の「広域」条件で京産大は外されて、加計学園1校のみになったんですよね?
なんでそこから「せめて1校のみとするよう」会長は奔走したんですか?!
つまり11/9の「広域」条件によって、加計学園1校のみに絞られたというのはウソなのだ。
会長に何らかの大きな勘違いがなければ。
「じゃあなぜ『広域』条件みたいなのが出てきたの?」
こう思われる方がいらっしゃるかもしれない。
その理由は、八田達夫氏(国家戦略特区ワーキンググループ座長)がすでに述べているので紹介したい。
「加計1校にしぼるため」と真逆の話
youtu.be
↑の会見で、八田氏は非常に興味深いことを言っている。
「広域」条件は、加計学園も京都産業大学も新潟(ちなみに新潟を報道しているマスコミを、私は見たことがない)も全部認めるための手段
と言っているのだ。
「加計学園1校にしぼるため」と真逆の話だ。
どういうことか。
国家戦略特区ワーキンググループは今回の獣医学部だけではなく、他の岩盤規制にも挑んできた。
あらゆる特区で農業生産法人を設立できるようにしたかったが、既得権益側の圧力があり結局養父市のみとなった。
あらゆる特区で医学部を新設できるようにしたかったが、既得権益側の圧力があり結局成田市のみとなった。
↑の結果から、獣医学部新設においても、当然既得権益側から圧力がかかることが予想された。
そこで今回は、先手を打ったのだ。
つまり、日本獣医師会などの既得権益側が「1校のみ」と圧力をかける前に、「広域」条件をつけて「ちゃんと配慮していますよ」感を出そうとしたワケだ。
そして八田市が「化かし合い」と言っていることからも、恐らくこの文言の妙により逆に京産大のようなところが外されないよう工夫したものと思われる。
事実、八田氏は京産大について↑の会見で「京都といっても北部の綾部市が候補地であり、地理的に見て周りに獣医学部がないと言える」旨を明言している。
どうだろうか。
確かに↑の会見だけだと「そりゃ、特区を進めようとしている側の人間だから、都合良いように言うに決まっている」と思う方がいるかもしれない。
しかし先の日本獣医師会会長の発言とセットで見れば、実にキレイに辻褄が合うことが分かるハズだ。
マスコミは国民を代表してちゃんと調べてくれ
以上から、「『広域』条件によって京産大が外された」というのは大嘘だと私は思っている。
可能性は非常に高い。ただタイトルにつけた「証拠」とまでは言えないかもしれない。
しかしこれだけ辻褄の合う話を、なぜマスメディアが報じないのか私は不思議でならない。
少なくとも玉木氏を始めとした野党が主張する、
「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域 に限り」という新条件を追加したことで、事実上、京産大が外され、加計学園だけが選ばれる道ができたという説への反論には十分なり得るものだ。
しかもこんなの日本獣医師会が普通に公開しているものだし、国家戦略特区ワーキンググループ座長がわざわざマスコミを集めてきちんと説明しているものなのだ。
先日あるツイートが話題になった↓
【お尋ね】
不勉強なのでお教え下さい!
「記者は私達国民の代表」と思われない方はRT下さい🙏 pic.twitter.com/wZjticEQmU— みやのすみれ (@sumiremiya) 2017年6月11日
有権者の多くは本業を持っている。時間がないのだ。
マスコミ記者が私たち国民の代表という気概をもつのであれば、せめてこれくらいのことは調べてニュースにのせていただきたい。
似たような方向からばかり、光を当てるのはもうやめていただきたい。
なおマスメディアの既得権益と、今回の獣医学部のソレとは共通の問題があるので、別の機会にこの辺のことを書いてみようと思います。