韓国での徴用工訴訟問題。
これずっと、ありえない判決だと思っていました。
だからビックリしたんですよ。この判決を支持する人たちが、それなりに存在することに。
まあしかしそれなりに存在するということは、僕が分かっていないこともあるのだろうと思い直してちょっと調べてみました。
結果、私が思っていた以上にありえないことが分かったという話です。
ちなみに結論だけご覧になりたい方は、↓の目次の「まとめ」だけ読んでください。
あとこの記事は「日本と韓国でこれ以上文句言いっこなしの約束(日韓基本条約、日韓請求権協定)を結んでるのだから、何をいまさら!」というぐらいの情報レベルの方にはオススメです。
というのも、調べる前の僕がそうでしたから。
では具体的に書いていきます。
判決支持の理由は個人請求権
twitterを見ると、徴用工判決を支持している人の主な理由は「個人請求権」というやつでした。
ざっくり説明すると、
日韓の約束(日韓基本条約、日韓請求権協定)は国と国が結んだもので、そこに個人は入っていない。
個人が請求する権利はまだ残っている。
そしてそれは当の日本も認めている。
だから今回の判決は何もおかしくない
という主張です。
実際のつぶやきを、いくつかピックアップしてみました↓
「徴用工個人の請求権 外相『消滅してない』/衆院外務委 穀田議員に答弁」
きわめて重要な質疑です。「個人請求権は消滅していない」ことを認めるなら、日韓両政府がこの一致点を基礎に話し合い、被害者の名誉と尊厳を回復する方策を見いだすことができるはずです。https://t.co/pU33v0sZVG— 志位和夫 (@shiikazuo) November 15, 2018
韓国の徴用工問題の平和フォーラムで発言してきた。請求権協定は国家間で保護権を放棄したのであって、個人の請求権まで消えたわけではない、と日本政府は発言してきた。したがって、韓国での司法判断はそれなりに重く受け止めて、日韓政府間で何らかの仕組みを作って解決に努力すべきであると。
— 鳩山由紀夫 (@hatoyamayukio) November 21, 2018
韓国最高裁の徴用工判決を「国際法上あり得ない」と批判した安倍首相の方が「国際法上あり得ない」ことを法的に解説した記事。判例集や国会議事録を精査せず安倍首相のいうままに韓国が一方的に約束を反故にしたと振り撒いて隣国への憎悪を煽った日本マスコミの責任は重い。https://t.co/wwOb0dhQBh
— 鮫島浩 (@SamejimaH) November 23, 2018
なるほど、確かに一理ありそうですよね。
でも実際は、個人の請求権なんて話は関係がないようです。
個人の請求権なんて関係がない
個人の請求権が関係ないと言える理由については、木村幹さん(朝鮮半島地域研究がご専門の先生)のつぶやきがとても参考になりました。
ざっくり言うと、
韓国の裁判では「個人請求権が残っている」という理由で判決がくだされたのではない。
そもそも日本の韓国への植民地支配が違法。
違法な中で行われたことは日韓の約束の枠外になる。
だから、日本企業に慰謝料を請求することができる
という論理で、韓国大法院は判決をくだしたようです↓
いやだから、韓国大法院は「請求権協定にもかかわらず個人的請求権が残っている」という主張をしてるんじゃないんだって。頼むから判決文ちゃんと読んでよ。 https://t.co/gpV33LJ5kh
— Kan Kimura (@kankimura) November 23, 2018
メディアもコラム書く人も、韓国を批判する人もその批判を批判する人も、肝心の判決文に目さえ通していない手抜きの人々ばかりである。現実と乖離した議論、ただの自己満足。無意味。
— Kan Kimura (@kankimura) November 23, 2018
何度も書いてるけど、今回の大法院の判決は、「不法行為に伴う慰謝料請求権は請求権協定の枠外にある」と言っているのであって、「請求権協定は単なる外交的保護権の放棄だから請求権協定にもかかわらず個人の請求権は残る」という論理は使っていないんだよ。
— Kan Kimura (@kankimura) November 23, 2018
そしてその前提に「そもそも日本の植民地支配は違法である」という法理を持ってきているから、極端な話、植民地政府が税金取ったのも、交通取締したのも違法になる訳で、それに対する慰謝料請求権が生じてしまう。だから破壊的。
— Kan Kimura (@kankimura) November 23, 2018
木村幹さんは専門家ですし、↑のつぶやきは間違ってはいないのだろうと思いつつ、念のため自分でも判決文について調べてみました。
結果やはり、木村幹さんの主張は間違っていないようです。
(ただし僕は韓国語が分からないので、判決文について書いてあるものを拾い読みしていった感じです)
だとすると上で声高に判決支持している人たちは、いったい何に対して主張しているのだろうという話になってしまいます。
ということで、話をまとめます。
まとめ
日本で徴用工判決を支持している人たちは「個人の請求権はまだ残っている」ことを理由にしている。
しかし実際には、韓国の裁判でその論理は使われていない。
じゃあどういう論理が使われたか。
日本が韓国を植民地にしたのは違法。
なので植民地時代の慰謝料請求は、日韓の約束(日韓基本条約、日韓請求権協定)と関係ねえです。
という論理。
だとすると、まさしく国際法上ありえない話。
この論理が通用するなら、植民地化していた他の国々にも同じことが言えてしまう。
ちなみにこの「そもそも植民地が違法だから」論理に対して何らかの主張している判決支持派の人は、私が見た範囲ではいませんでした。
ということはですよ。
徴用工の判決を支持している人たちは「判決文を読んでいない」あるいは「読んで分かった上でシラをきっている」ことになります。
一般市民が知らないのは、まあしょうがないですよね。
政治家や活動家がシラを切るのも、まだ分かります。
もちろんダメなんだろうけど、そういう職業っちゃそういう職業ですからね。
でもジャーナリストとかマスコミはダメでしょ。
判決文を読まないで、間違った発言をしているのならプロ失格。
シラをきっているとしても、プロ失格ですよね。
まああくまで、上で書いたことが正しいという前提ですが。
どうなのでしょうか。